量子生物学と脳神経細胞の働き(17)

(9)量子生物学


 量子生物学は、量子力学の考え方で生物の活動を説明しようとする科学の一分野です。セント・ジョイジ・アルベルトにより1950年代に提唱され、ミクロのレベルまで考慮して生命の謎を探究することで、生物と量子力学の関係が数多く発見されています。
 ≪一例≫
鳥の「量子コンパス」。渡り鳥の欧州コマドリは、飛ぶ方向を決める時「量子もつれ」を活用していると考えられ
 ています。 
・光合成の時、エネルギーの効率的な最速経路を見つける為に、葉緑素(クロロフィル)の中に「量子のうなり」が確認され、量子の性質を活用していると考えられています。
クマムシの水分は、絶対零度に近い温度でも液体状態を維持することができます。クマムシの水分子が、水素結合よりも量子効果による強い分子間力によって互いに引き合っていると考えられいます。
・鼻の中の受容体は振動する事で、量子振動と共振して特定の匂いの分子を感知をすると考えられています。
脳神経細胞の働きは、量子力学を活用していると考えられています。


【量子状態にある脳のイオンチャンネル】
 筋肉の細胞膜には、イオンチャンネルと呼ばれる穴が開いています。イオンチャンネルが開くとナトリュウムイオンが細胞の中に流れ込み、これによって、放電が起こり、腕の筋肉の収縮が引き起こります。では、このイオンチャンネルの穴は何故開いたのでしょうか?


①腕の筋肉につながっている運動神経が神経伝達物質を放出します。
 この運動神経は活動電位と呼ばれる電気信号がやってくると、必ず神経伝達物質を放出する仕組みになっています。


②活動電位は、頭部に1000億個以上ある神経細胞ニューロンの中の細胞体で発生します。脳以外の場所にも数百万個のニューロンが存在し、互いに結合し情報を送りあっています。


③細胞体はシナプスと呼ばれる部分と繋がっており、ここでも神経伝達物質のやり取りをしています。神経細胞伝達物質が放出されるとイオンチャンネルが開きます。


④脳内で大量の神経伝達物質が放出されると、多数のイオンチャンネルが連鎖的に開いていき、神経細胞の軸索に沿ってイオンチャンネルの扉が波のように次々と開いたり閉じたりしていきます。これにより、ドミノ倒し的に電気信号が伝わっていき神経末端へ到達していきます。


 脳の中で量子力学的現象が起きているかもしれない場所が、神経細胞の膜の中にあり、イオンチャンネルは脳の中で神経情報処理において中心的な役割を果たしているのですが、私たちが知っている物理法則では考えられない程の速度でイオンを出し入れし、さらに何を通して何を通さないかについての常識では考えられないほど優れた選択能力を持っていることが分かっています。2012年、神経科学者のグスタス・ベインロイダーとウイーン工科大学原子研究所のヨハン・サムハマーは、イオンはイオンチャンネルを通過する際に、非局在化して広がり、粒子と言うよりコヒーレントな波動となることが分かりました。
 神経細胞のイオンチャンネルを通したイオンの輸送には量子コヒーレンスが欠かせない役割を果たしており、そのため、我々の思考プロセスにとっても欠かせない存在であると結論付けされました。


【まとめ】
イオンは粒子だと思われていましたが、イオンチャンネルを通るときは何処に存在するのか観測するまで確定しない「波」の領域で広がる。その量子作用は意識に関与していて、神経細胞が機能するためには欠かせません。


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