「量子力学」の理論と解釈(9)

(4)「量子力学」の理論と解釈


「量子力学」について、物理学者の間でも議論され、様々な理論・解釈が生まれました。そのいくつかを紹介します。(①~⑤)


① コペンハーゲン解釈
コペンハーゲン解釈とは、ボーアの研究所がコペンハーゲンにあったので、名付けられました。「量子は物質ではなく、波動性を持った重ね合わせの状態のエネルギーとして存在し、外部からの観測のエネルギーを受けた瞬間に一点に収縮した粒子となって出現する。」という考え方です。「標準解釈」とも呼ばれるものです。
 量子レベルの物質は実際に観測されたものだけが物質化し、観測されない限り「そこにあるかもしれないし、ないのかもしれない」という可能性の波として存在しているということになります。


 コンピューターの父と呼ばれるジョン・ノイマンは、1932年に出版した「量子力学の数学的基礎」の中で、「コペンハーゲン解釈」以外の解釈は、数学的に成立できないと証明しました。当時の研究者は天才ノイマンが証明したので間違いないと思っていましたが、後で不完全なものとわかりました。
 その一つとして、「観測するまで実在性が無いとするなら、一匹のネズミが見ても、宇宙の状態が定まることになるのか?」というアインシュタイン博士の問いかけに答えることができないのです。


「コペンハーゲン解釈」は、現在の科学技術の道具として全く不自由なく、先進国の産業技術発展に利用されています。携帯電話やパソコンの半導体技術、また、DVD、レーザー、デジカメなども量子力学の理論なしにはできません。今後、さらにコンピューターなどにも実用化されていきます。


② 多世界解釈
 1957年エベレット3世が提唱。この考えは当初、受け入れられず数多くの紆余曲折が有り、次のような解釈にまとめられました。
・重ね合わせ状態をミクロとマクロに分けたりせず、世界の全てのものに適用される。
・波動関数は確率を計算するためのものではなく、宇宙全体に渡って実在している。
・波動関数は収縮などせず、あらゆる可能性が並行に同時に存在していて、観測した瞬間に一つの世界に入り込むようイメージとする解釈。


「コペンハーゲン解釈」は、観測されない物は語らず、観測した物だけを扱う「実証主義」、一方、「多世界解釈」は、全ての物が実在するという「実在主義」です。
「多世界解釈」は、「コペンハーゲン解釈」で解決できなかった、「二重スリット実験」と「量子もつれ」における観測者効果を両方とも矛盾なく説明できる解釈として注目されています。ただ、実証した人はなく仮説の段階ですが、最先端物理学者の間では真剣に検討、議論されています。
 多世界解釈のことを「パラレルワールド」とも言い、並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われています。


③ マルチバース理論
 複数の宇宙の存在を仮定した理論物理学の解釈。多元宇宙 は、理論として可能性はありますが、実証ができません。


④ 意識解釈
人間の意識によって波動関数の収縮が起こるとする解釈。人の意識自体が、科学ではまだ解明されていない上、理論的な裏付けや実証が難しく哲学と合わせて考察されることが多く、可能性として否定できない解釈です。


⑤ テレパシー論
人間の意志こそが素粒子のあり方を制御するという解釈です。

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